梅が香に 昔をとへば 春の月 こたへぬ影ぞ 袖に映れる
藤原家隆(ふじわらいえたか)
(うめがかに むかしをとえば はるのつき こたえぬかげぞ
そでにうつれる)
意味・・梅の香りに誘われて昔のことを春の月に尋ねると、
答えない月の光が涙に濡れた私の袖の上に映った。
伊勢物語四段が背景となっています。
愛情が深くなっていた女性がいたが、突然身を隠
した(知らせずに結婚した)。翌年探し訪ねてみる
と、落ちぶれた姿になっていた。還らぬ昔を思う
と懐旧の涙が出た。
注・・影=月の光。
袖=懐旧の涙で濡れた袖。
*****
歌の背景となっている物語まで含めて読むとやはり興味深い歌。
歌自体だと少し言葉が足りないかなという感じ。
かなり極端なことを言っているのだけれど地味な印象なのは
やはり歌の腕ということなのだろう。
けばけばしくなくて良い味だと言うこともできるかもしれない。
袖が涙で濡れてしまい
そこに月が映っているなんて
貴族君というものだな、これが。
「しもじもの皆さん、わたしが家隆です」とでも言うか。