我が恋は ゆくへも知らず はてもなし あふをかぎりと 思ふばかりぞ
凡河内躬恒
この恋は、どこへ向かうともわからず、その果てもわからない、ただ、逢うことを終着点と信じるばがりだ
あふをかぎりと 思ふばかりぞ
の語感は
ただ、逢うことを終着点と信じるばがりだ
という間の抜けた感じではない
逢えないなら、死なせていただきます という具合
最近では男の側が
我が恋は ゆくへも知らず はてもなし
なんて語ってしまう時点で
ナルシスナルくんだーーとばれてしまい
逢うなんてできないのだけれど
女の側でこのように発信すると
まだまだ許されるらしく
ひっかかる男性は多いらしい
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もうどうしようもないと分かっています
行き止まりの恋だと分かっているの
それでもただもう一度だけ逢いたいと思ってしまう
自分のこころがとめられません
我が恋は ゆくへも知らず はてもなし
というのは
不倫で奥さんがとてつもなく頑強だとか
妻の実家の会社を継いでいる婿さんだとか
国籍問題でもめているとか
とにかくもう逢うだけも難しい絶望的な場合
通信は全部把握されて
尾行がついている
部屋には全部隠しマイク
諦める苦しみもあるが
続ける苦しみの方が遙かに大きいと判断して
やめるのがいいのに決まっているのに
逢ふをかぎりと 思ふばかりぞ
それでもただもう一度だけ逢いたいと思ってしまう
自分のこころがとめられません
なんて言われて ほろりとなって
今度の出張で何とかならないかとか言っているわけなんだ
恋愛って何かこのように理不尽に、むきになるところがあるようで
はたで見ているとなかなか興味深い
ところがまた、その人でなくっちゃ、いやという
説得不可能な部分に関しては、
そういわれた人にすれば
心を動かす部分でもあるわけで、
おもしろい
よく聴いていると
説明可能な理由があるわけでもないし
その人は恋愛モードになると
そんなことを言ったことが何度かあるようだ
その人が恋愛を感じたときの決まり文句のようなものなのだろうと思う
あなたでなくちゃだめなの
あなたに会うためだけに生きているの
誰にでもそういうのだとは気付かずに
そう言われたとしたら
多分うれしいでしょう?
それを知っていて、
同時に三人くらいの人にそう言って
幻惑しているのが
最近の悪い女なのだ
男だって、まあ、そうだろうなと思いつつ、でれでれしているのだから
それはそれでいいのだけれど
聞いてみると、具体的な男性Xは、代入可能な変数のようなもので、
いろいろに取り替え可能であるらしい
男はまだ経験の浅いうちはそんなことは知らずに
「オレだから、こうなる」なんて勘違いしていて、
その様子も、はたからみていると面白い
年をとっても恋愛経験は浅くて、
だからころりとだまされて、とても幸せな人もいる
だまされていた方が幸せなんです、圧倒的に
仕事とかお金とかを褒めていると
仕事は辞めることもあるし倒産もあり
当然お金はなくなることもあり
従って仕事やお金などの可変部分に惚れていると言っては不利になる
やさしい目だとか、静かな言葉とか、
やさしいテクニックとか、私を先にしてくれる思いやりとか
状況が変わっても変わらない部分をなるべく褒めることで
貧乏になって東京には滅多に営業に来なくなっても、
ひょっこり来て、大金を使ってくれたりするのだという
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この歌のように抽象的だと活用範囲が広いらしい
誰にでも当てはまる口説き文句を言う女は頭がいい