アサーションを日本語に訳すと「主張」です。
でも、「主張」と言っても、自分の意見や要望を無理やり押し通すとか、
相手が同意するまで説得するとか、自分の言いたいことだけを言って
相手を自分の思い通りに動かそうとすることではありません。
そんなふうに、自分勝手で攻撃的なものでも、策略的なものでもないのです。相手がどんな返事をするかは、相手が考えて決めることで、相手の領域。
相手の返事を自分の思い通りに強要するなんてできません。自分にできることは、自分の言いたいことを相手に伝えるということだけ。
つまり、「アサーション」というのは、
自分の感じていることや気持ち、考えていることなどを、
自分も相手も共に大切にする関係の中で、誠実に率直に伝えていくこと。アサーティブになるということは、人に対して率直な対応をし、
そのことで対等な人間関係を築いていくことなんです。アサーティブには、大切な5つのポイントがあると私たちは考えます。
アサーションというのは、言葉の選び方とか、言い方だけではないんですね。1.自分の正直な気持ちに気づく
「こうあるべき」とか「こうしなければならない」
というところで修正したものを、自分の気持ちと思っていることが多いもの。
頭で考え、修正する前の自分の気持ちを まず、感じ取りましょう。2.自分の正直な気持ちを大切にし、ごまかしたり否定したりしない
「自分の正直な気持ち」を修正しないことは、その気持ちに誠実であるということ。
そしてそれは、自分を偽らないで相手に接するということで、
相手に対して誠実に接することにもつながります。3.自分も相手も対等な関係であることをしっかりおさえておく
相手と向き合うときには、自分も相手も尊重します。
つまり、相手を見下したり、自分を卑下したりしないで対等に接します。4.伝えたいことを屈折させずに表現する
人に自分の気持ちや要求を伝えるときには、どなったり、弁解したり、
遠回しに言ったりしないで、率直に表現することが大切です。5.表現したことについて、自分を責めたり不愉快になったりしない
自分の気持ちや要求を表現した結果、自分が望んでいない反応を
相手が返す場合もあり得ます。
でも、相手がどう受け取りどう反応するかは、相手の領域。
その反応によって、表現をした自分を責めたり
不愉快になったりしないことは大切なことです。「言いたいことが言えない」「断りたいのに断れない」
「引き受ければ自分が大変になるのはわかっているのに、
引き受けてしまって、相手を恨んだり、自分を情けなく思ったりする」
「いつもにこやかに振る舞っている自分がとてもいやになってしまう」など、
人との関係がうまくいかないことで人間関係に疲れてしまうことはありませんか。今まで私たちは、それを自分の性格のせいにしたり、
人間関係にはよくあることだと納得させたりしてきました。でも、実は、よりよい人間関係を築くためのコミュニケーションの方法を
学んでこなかったのではないでしょうか。私たちが小さい頃から身につけてきたのは、いつも相手の気持ちばかりを
優先させてしまう自己犠牲的なコミュニケーションの方法だったり、
逆に相手に自分を押しつけるような方法でした。
そのため、人との関係がうまくいかなくなってしまっていたのです。「自分の感じ方や考え方を大切にしていいこと」「感じ方、考え方は人と違っていていいこと」
「自分の中の『いやだ』という気持ちを伝えても、つながっていける関係があること」
などに気づくことで、人との関係のあり方が変わっていきます。そして、それ以上に大きな変化は、自分自身のあり方かもしれません。
自分の人生を自分で選び取っていっているという感覚や、
背伸びをしたり無理をしないで、等身大の自分でいてもだいじょうぶという感覚が、
自分の中に少しずつ広がっていくこと。つまり、私自身の中の力に気づいていくことができる、それがアサーションの
一番の魅力なのではないかと思います。