今は露おく鬼アザミ 深き情けの関超えて

月の都を立出でて 身は鈴懸けの旅衣
紫匂うリンドウも たたく時雨にうなだれて
今は露おく鬼アザミ 深き情けの関超えて
気も晴れ渡る花の道
飛び六法の蝶ひとつ

「紫匂うリンドウは」義経、「たたく時雨」は兄頼朝、「露おく鬼アザミ」は弁慶、「深き情けの関」は富樫を指している。

武運赫々たる義経が、兄頼朝に疎まれ京を追われて諸国流浪の旅をするとは誠に痛ましきこと、と嘆く弁慶の真心に打たれた富樫の情により、無事に安宅関を越え、気も晴れ渡る花の道を、飛ぶがごとくに走り去る、という意味。