上司によるパワハラで精神障害、自殺

上司によるパワハラで精神障害、自殺という記事が
朝日夕刊に出ていた。

上司に人格を否定されることを言われたら、
精神病になるのか、病気って、なんなんだと思うだろう。
弱いだけじゃないかと思うだろうか。

しかし待ってほしい。精神病になるのではなくて、
精神障害になるのだ。

たとえて言えば、殴られたから青あざができるようなもの。
無理をして走ったから、捻挫したようなもの。
こういうのは、病気や疾病ではなくて、障害である。
diseaseではなくdisorderや、disabilityである。

精神科領域では、疾病概念として確定したものを除いては、なるべく障害概念で
考えていこうという態度である。
疾病概念としては、アルツハイマー病などがある。
障害概念としては、不安性障害、パニック障害、気分障害、など。
疾病には治療が、障害にはリハビリテーションが主に対応する。

統合失調症の場合には、陽性症状が疾病にあたり、
陰性症状が障害にあたると考えるのも分かり易い。
しかしそれはとりあえず分かり易いというだけで、
真実かといえば、問題がある。
陽性症状よりも陰性症状よりも前にある、ある症状が、疾病本体であり、
陽性症状は障害に対する反応であり、
陰性症状は残遺した障害であるとみるのもひとつの妥当な見方である。

甲状腺機能が亢進している場合、病気であって、治療を要する。
捻挫したという場合、人に押されたかもしれないし、自分で足を挫いたかもしれない。
いずれにしても、結果として捻挫しているわけだ。捻挫を病気や疾病とはいわない。

上司の心無い言葉で精神障害になり、自殺に至るという表現は、正しいのだろうか。
パワハラの言葉や態度で、心が傷つき、
不安性障害や気分障害になることはある。
捻挫と同じ。
しかしそのことと、自殺実行の間には、かすかだが隙間があるように思うのだが、どうだろうか。

これはかつて流行した、PTSDの議論と重なる部分もあるようで、慎重を要する。