無邪気な専門家 善の道の先が悪につながっている

マックス・ウェーバーが いいことをしていると思っているうちにいつの間にか悪いことをしているよと言ったもの
マルクスが自己疎外と呼んだもの
科学者でいうと、科学の進歩だと思って核物理学が発展して、
結果としては核兵器が開発されて、人類にとって究極の脅威となっている
遺伝子操作もそのような側面があり
科学者は「悪の科学者」になろうとしているわけではないが、
結果として、「無邪気な、世間知らずの、悪に利用される科学者」になりかねない
心理学も深刻な問題はあり、
マインドコントロールとか、そのあたりのことで
悪魔の手下にならないこともない
会計士はまじめに仕事をしていただけなんだけれど
結果としては企業の不正経理に手を貸すことになったり
ヘッジファンドの人たちも多分悪の自覚はなくて
ルールの範囲内での行動だと思っていたはず
一人一人がいいことだ、あるいは問題はないと思ってやっていることが
見方を変えるととても問題な行為だったりもする
人間には盲点というものがある
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政治家の自己保身も
役人の自己保存欲求も
内部の感覚としては
自分のためと言うよりは
国家のためであったり故郷の支援者のためであったり
多分そんなに悪くないという感覚なのだと思う
マスコミの人たちも
悪いことをしているとは思っていないと思う
本気で社会の木鐸と信じて行動していて
結果として社会に害悪を及ぼしているらしい
もっと分かりやすいところでは
生活保護や今回の緊急対処である雇用調整助成金制度が
中核部分ではもちろん善を行っているとしても
辺縁部分ではたして悪になっていないかを考える必要もある

薬剤もそうで
本来病気の治療に役立ち人間の幸福を増進するものだけれど
回り回って害悪にならないこともない

それは注意が足りないとかそんな表層のことではなくて
原理的に不可避な事態と思える部分もある

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アダム・スミス的な無邪気な楽天主義は
一種の罪悪だろう

善意から出たものでも結果が悪いこともある

結果を広く長い目で見る態度が必要である

無邪気ではいけない