自分の場所がある安心

 「自分でもあんなに落ち込むなんて驚いたんだけど、こんな時、絶対に行かなきゃいけない場所があるっていうのは有難いことだ。初めてそう思った。会社に着くまでは重くてどうにもならなかった気持ちが、出社したことで軽くなった。誰が何をしてくれたからっていうわけじゃない。ただ、自分の状況を理解してくれている人たちの中で、何も考えなくてもやらなきゃいけないことがあって、いつも通りの自分の居場所があるっていうことが、とても楽に感じた」
 「目の前の仕事をとにかくこなさなきゃいけないから、仕事をしている間は感情の蓋が閉まるし、そこの場の空気に自分と周りを隔てるものがないっていうことに救われた。こんなにも、会社という場所が自分にとって楽で、安心できる場所だったなんて。本当に驚いた」
「自分を知っている人がいる。自分を受け入れてくれる場所がある」
 母親が亡くなったことを何も言わなくても理解している人たちに囲まれてご飯を食べることで、ホッとした。そこで交わされる会話は、ぼーっと聞いていても理解できる。そのことに心地よさを覚えた。
 うれしい、とか、癒されるといった感情とは若干異なる、「楽だ」という感情は、決して前向きな気持ちを引き出すものではないかもしれない。でも、自分のいる空間を「楽だ」と感じることができれば、少しだけ元気を取り戻すことができる。