日本の将来像

2ヶ月ほど前に「日本の将来像をお選び頂けます」というエントリ(→こちら)で、ギリシャ、イタリア、イギリス、スウェーデン、アメリカの5つのモデルを挙げ、日本の将来はどれだと思いますか?と書きました。
そのエントリには“日本はどれを目指すべきか”、もしくは“ちきりんとしては、どれになると思っているか”は書かなかったんだけど、今日はそれについて自分の考えを書いておくです。

結論からいえば、消去法によっても、日本のもつ強みから差別化を考えても、いずれの場合も“イタリアモデル”だろうと、ちきりんは考えています。
まず消去法で考えてみる。ギリシャにはなんないです。そんな簡単に日本は破綻しない。消費税を20%にしたらいいだけだから。移民を大量に受け入れるイギリスモデルは日本国民が選ばない。この国の人って移民がやたら嫌いだから。ちきりん自身は移民賛成派ですが、国全体でそれが政策として選ばれると思えない。
そしてそれはアメリカモデルも同じ。ちきりんはこのモデルも悪くないと思ってるけど、日本国民全体での多数決(選挙)において、これを選ぶことにはまずならないでしょう。みんな“競争”も嫌いだから。それに、スウェーデンみたいな国になるのはとてもソンです。ああいうのは、森と泉しかない国の戦略であって、日本には人口密集から生まれる文化も含め、豊かな資源がたくさんある。スウェーデンのようにナンにもなければ(あの条件においては)ああいう国家運営もひとつの選択肢だと思うけど、日本がそんなのマネするなんてアホすぎる。

というわけで、ちきりんは「イタリアモデルが、日本が進む道」だと思うし、「それって結構よい道じゃん」と思ってます。具体的に言えば、前回も書いたようにこんな国↓です。

(経済)世界で10から20位くらいの間(先進国のしっぽのあたり)
(政治)ぐちゃぐちゃ。こんな奴が首相でいいのか?と言いたくなるレベル
(国際社会でのプレゼンス)特になし
(歴史)現代より、歴史=過去に栄光あり!

(首都)世界の人が憧れる大都市。ユニークに熟れた都市文化が存在
(田舎)訪ねるのは不便だが、すばらしく美しい。地元ならではのおいしいモノもたくさんある

(教育)この国の教育レベルが高い、などという人は世界にいない
(英語)みんな下手くそ

(企業)ごく少数の国際レベルの企業あり
(闇社会)マフィアもやくざもそれなりのプレゼンスがあり、クスリも蔓延
(失業率)常にそこそこ高い
(格差)わりと大きい。田舎に行くと都会とはかなり生活レベルが違う。都会にも貧しい人が多い
(出生率)低い。少子化が止められない国家

(国家ブランド)強い。“イタリア製”“日本製”という言葉には独特の付加価値がある
(食事)世界トップレベルの美味しさ。 世界中でブームが定着
(ファッション)食事と同様、独自のスタイルが世界の注目を集める
(観光産業)海外から、特に圏内(日本の場合はアジア)から多数の人が押し寄せる
(文化)世界にはない(アメリカのエンターテイメント産業の真似ではない)ローカルカルチャーが花開いている。イタリアと日本は、あのフランスが文化面で憧れる世界で唯二の国。

(まとめ)グローバル国家ではなく、超ドメ志向。“オレの国が一番いいじゃん系”

既にほとんど一緒でしょ?イタリアと日本の違いは“気の持ちよう”だけです。イタリア人の多くが“これでええねん”と思っているのに、日本には“これじゃあかん!”と言う人が多すぎる。一部にそういう人がいてもいいけど、みんながそんなことを思う必要は全然ないのに。

というわけで本日は、日本はグローバル国家になんかならないよーん!というお話でした。みんなで「オレは、私はめっちゃ日本が好きやねん!」っていう国になればいいんです。(過去参考エントリ→“日本、大好きなんで”)

だから、私たちがこれから大切にしなくてはいけないのは、英語力とかじゃないんです。
ーー 少なくとも日本に住んでることにフラストレーションを感じたことはないし、外国に住みたい!と憧れたこともないです。こんなナイスな国に住んでるのになんでそんなこと思う必要がある?って感じです。
アメリカに住んだのは学位を取りに行くためでした。当時働いていた業界って、「アメリカ以外の学位なんか意味も価値もなし」みたいな風潮があり、履歴書にアメリカの学位がないと「なんで?」と聞かれるようなふざけた環境だったので、仕方なく。あの国はそういう風潮を世界に広げ、バカ高い値段で「アメリカの学位」を売っている「学位マーケティング」の上手な国なんです。
というわけで、当時はお気楽な学生で楽しくすごしましたが、それでも暇があるとカリブ海を含む中南米、南米に遊びに行ってました。北米よりは圧倒的にちきりん好みだったので。その後もアメリカには仕事ではよく行きますが観光目的で行ったことは一度もないです。旅行ではスペイン語圏とアジアが好きで、いずれも短期滞在はしてもいいかなとは思いますが、やはり長く住みたいとは思いません。
比較分析したわけではなく、小さい頃からずうっと日本が大好きなので、他の選択肢を検討しようという気にならなかったです。何がそんな好きなのか、と言われても今更すぎますし、他の多くの「日本が好きな日本人」の方と同じだと思います。
が、一応書いておくと、(1)食べものが美味しすぎる。食べるってのは生きることと同義ですから。この一点のみにおいて、アメリカに住むって3回生まれ変わってもありえないでしょう。個人的に超の付く和食好き、“銀シャリ命”なちきりんですが、ここで言っているのは日本食のみならず、世界の料理がここまで多彩に本格的なレベルで手に入る国ってないでしょ、ってこと。イタリアとか確かに美味しいのだが、イタリア料理比率がが高すぎ。日本は世界のグルメが楽しめるし、しかもA級からB級までほんと多彩。
(2)決めたことが実行される。たとえば店で何か大きなものを買って配送を頼むと、ちゃんと届く。“水曜日の3時に会いましょう”って決めた人に会いに行くと、ちゃんと3時に来てる。15時発の電車も15時に出発するし。飛行機に乗る時に荷物を預けると、到着地でちゃんとターンテーブルに載って荷物がかえってきますよね。こういうのも“グローバルスタンダード”では「すごい!」「信じられない!」ようなことなんですよ。日本は本当「ストレスフリー」ですばらしい。
(3)平和で犯罪も少ない。これは時代もあわせてですが、今の日本はほんとに平和でいい国だよね。真夜中に大半の場所を若い女性が一人で歩ける、世界でまれに見るすばらしい環境に私たちは住んでいます。日本だと家を借りる時に「このエリアの治安は?」と気にしたことのない人が大半でしょう。世界の他の地域には、そもそも“住んでいい地域”と“住んではいけない地域”があるんです。まずはそれを理解することが家探しの第一歩だし、家賃にも歴然とした差があります。(安く住むということは、命や財産をリスクにさらす、ということです。)テロも日本では1995年のオウムのサリン事件が一番直近で、あれから14年起きていません。いつ町中で自爆テロが起きてもおかしくないイスラエルや、テロが絶えないアジアの国(インドネシア、インド、パキスタン等々)や、2001年以降大型テロに狙われた米英スペインなどに比べても、相当“安心度”の高い国です。(“責任能力のない人”の凶暴な犯行はどの国にもあり不可避です。)あと、ロシアや中国のような国家主義的な国だと、ブログで好き勝手書くのも怖い。ちきりんがもしロシア人ならプーチン氏の批判はブログでは書かないです。日本で麻生さんの批判書いて危険を感じるなんてありえないじゃん。(てか、支援サイトを書く方がむしろ危険を感じるくらいで・・)前にあった事件ですが、日本人がアメリカの飛行機にのって酔っぱらってゴミの入った紙袋を手に持ち、そしてスッチーに何かの冗談を言った。スッチーが怪訝な顔をしていると、そのおじさんは「冗談、冗談!!」と言ったのだが、それを「ヨルダン、ヨルダン!(に行け!)」と聞き取ったスッチーはすぐさまパイロットに非常通報し、飛行機が成田に逆戻りした、という事件がありました。平和でないと冗談も通じないわけよ。
(4)他国に攻め込んだりもしない。これも時代との合わせ技ですが(昔は日本も他国に攻め込んだりしていたので)、ありがたいと思います。自分の国の軍隊が、石油のために他国の無実の人の上にミサイルをぶち込んでるなんて、考えただけでも気分悪いです。ちきりんは護憲論者でもないし、日本が軍隊を持つべきだとは思っています。が、自分達の制度が世界で唯一正しいという偏狭な思い込みのために、他国の人の命を平気で犠牲にするような国&時代に生まれなかったことに心から感謝しています。
(5)比較的、格差が小さい。最近は日本でも格差、貧困問題が云々されますが、世界基準で言えば、やっぱり日本は相当程度、平等な国だと思います。統計的な貧困率やジニ係数はそうでもないようですが、実感としては、“じゃあ、日本より平等な国ってどこよ?”って感じです。日本って格差がある、拡大してるって、政治でもテレビでも大騒ぎでしょ。でも騒ぐってことは、みんなそれを解消すべきだと思ってるってことだし、解消できると思ってるわけですよね。
一方で、世界では「貧困は当然に存在するものであって無くなったりはしないので、富の再配分で“解決”すればよい」という考えの方が一般的です。日本みたいに「格差自体を解消すべき」と本気で思ってる国は、まだまだ希望に溢れてると言えるでしょう。
実際、中東や南米など石油や鉱物のでる国はもちろん、中国やベトナムなどの発展途上国や共産国の特権階級の“無茶ぶり”はちょっと驚愕するレベルです。平均給与もひとりあたりGDPも日本とは桁が違う低さなのに、彼等が受け取る賄賂は日本と同額ですから・・。
(6)精神的こだわりや縛りが少ない。宗教が強くないのがいいよね。神を信じなくていいからすごく自由。アメリカのキリスト教、中東のイスラム教、韓国の儒教、どれも個人の生活様式にはもちろん、法律や国の政策にまで影響を及ぼします。その点、「楽しいお祭りはとりあえず祝う」日本はほんと気楽でいい。
(7)細かいことにこだわり高品質だし、いろんなものがかわいい。日本で売ってるものって、他国で売ってるものより圧倒的にディテールへのこだわりがあって、ナイスだと思う。おおざっぱじゃないのよね。とことんこだわる。日本には欧米にあるような圧倒的なすばらしい美術館はないけれど、日常的なグッズのレベルに関しては世界でぶっちぎりのトップだと思います。
昔、欧州の友人が日本にきて「日本でバンドエイド買うと、裏のシールがきちんとはがれるから驚いた」と言ってました。そんなこと言われたこっちのほうがびっくりです。日本向けの商品って“若干やり過ぎ”なくらいにファインチューニングされていますが、ずっと日本にいてこれが当たり前になっちゃうと他に住めなくなります。
(8)いろいろあって退屈しない。社会福祉や教育制度の面で北欧をお手本にしたような議論が多いですが、国としてはあんなとこ全くおもしろくないですよ。まあハイジみたいな性格(星空の下で眠り、昼間は来る日も来る日も草原を駆け回って山羊や羊と戯れていれば楽しく、固いパンと塩スープがあれば幸せ、みたいな人)ならああいう国もいいのかもしれませんが、煩悩溢れるちきりんには、すかすかで(=人口密度が低すぎ)、文化が“薄い”国はおもしろくないです。
加えて北欧は太陽光も少なく、こんなこと言うの申し訳ないけど全体に薄暗い。退屈という観点では、北欧、スイス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダタイプの国には住むどころか、ちきりんは旅行先としても全く興味が持てないです。
アジア諸国の汗臭いエキサイティングさ、アラブ社会の混沌、欧米大都市のハイエンドな煌めき、アフリカ大陸の圧倒的な雄大さと並び、東京のポップなぐちゃぐちゃさは、ものすごくおもしろい、と思います。あと、北海道と沖縄のどっちもを(こんな小さな国なのに)一国の中にもっている、というのも画期的。内陸のほか、日本海側と瀬戸内、太平洋岸も同じ。それぞれに個性があり、自然がとても美しい。そのうえ四季がある。もー圧倒的な多彩さです。「明るくて温暖ですばらしく快適」な気候の国は、ギリシャとかがありますが、“わびさび”含めた多彩さは日本が一番と思うです。というわけで書けばいくらでもありますが、こんな理由でちきりんは日本が大好きだし、満足していてとてもハッピーです。もちろん最初に書いたように、これは客観的な比較ではなく単なる個人の主観・趣味嗜好の話なんで、他人様に押しつける気は全くありません。日本を嫌いな日本人がいてもナンも問題ないです。