表参道に面して立つコープオリンピア
162戸、地上8階建て
竣工は東京オリンピックの翌年の1965年
そして44年目の春
国土交通省の資料によれば、築30年を超えるマンションは全国で約73万戸と、マンションストックの14%に達している。築30年超の物件は、2011年には約100万戸、2019年には約200万戸と急増していく。今後、建て替えに踏み切るマンションが続出する「マンション建て替え時代」が到来するのは間違いないだろう。
内側では老朽化が進んでいた。給排水管の漏水、外壁のひび割れ、天井の雨漏り――。こうした修繕のために、年間3000万円近いコストがかかっていた。
外壁の大規模修繕を行ったのは20年ほど前の話。2回目の大規模修繕に踏み切るかどうか。管理組合は検討を始めた。すると、衝撃的な事実が判明した。耐震補強工事を含めると、大規模修繕費用は26億円に達することが明らかになったのだ。
耐震補強をしなければならないが、補強工事の間、住民は別のところに転居しなければならない。そういった事情を考慮すると、「建て替えがベスト」と管理組合は判断した。
マンションの所有者は年代も所得も異なるもの。“民主主義の苦しみ”といえばそれまでだが、立場がバラバラの人々をまとめて、意見の統一を図るのは想像以上に困難が伴う。現実に、年輩の所有者からは「死ぬまで建て替えなくてもいい」という声も上がったという。
「ぼくは今年、78歳になる。建て替えを始めたら、よそに引っ越ししなきゃならないが、ここに帰ってくるまでに死んでしまうかもしれない。でもね、将来のことを考えると、ここで建て替えをしないと間に合わないんだ」
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なるべくならば考えたくない難問。
なるべくならば考えたくない難問。