動作に時間がかかる 強迫的緩慢

 強迫的緩慢(かんまん)を知っていますか?

「緩慢」というのは聞きなれない言葉ですが、英語ではslowness、
「ゆっくり」という意味です。強迫性障害の症状の一つですが、
「繰り返し」のような明らかな強迫行為は見られません。

緩慢は日常生活で何らかの行為をするのに、動きが長い時間止まってい
たり、次の動作に移るまでの時間が非常にかかったりして、一つの行為
を終えるのに、とても多くの時間を使わなければなりません。
たとえば、靴を片方置くのに10分、どのメーカーの洗剤を買うかを決
めるのに2時間、といったこともあるそうです。(*)

一つの行為を終えるまでの間、本人の頭の中では、絶えず強迫的な思考
がよぎります。自分の考えに自信が持てず、疑いがいつまでも取れない
ということは、多くの強迫性障害の患者さんが体験するものですが、
そのような、思考により、緩慢の症状が現れる人もいます。

また、自分が決めた言葉や数字に、ルールやタイミングのようなものが
あり、それに沿うよう、あれこれ組み合わせを考えたり、その条件が
すべて整うまで行動を起こさない場合もあります。なかには完璧でない
と、何か不幸なことが起きそうな気がするという強迫観念を持つ人もい
ます。ただし、このような思考自体が遅いわけではありません。

動作が遅くなっているときの心理状態を当事者に聞かないと、強迫的緩
慢かどうかは判断できません。このような行為が病気の症状であるとい
うこともあまり知られていないため、周囲の理解がなかなか得られませ
ん。

強迫性障害以外の原因によって動作が遅いものは、強迫的緩慢には
含まれません。
すぐにはできなくても、時間をかけてもよい作業ならば、結果として
うまくできることもあり、周囲の人は理解に苦しむことが多いのです。
また、見ていてイライラすることも多いでしょう。
周囲にわかってもらえないことは、本人にとって苦痛なことでしょうし、
よけいに辛い思いをするのではないでしょうか。強迫性障害の症状には、
このようなものもあるということ、知っておきたいですね。