不幸自慢

人間は不思議なもので、
普通は隠しておきたいことも、
場面によっては誇らしげに語り、
相手よりもすごいのだと優越を感じたりするようだ。

たとえば
私最近うつっぽいのと打ち明けられた
先輩が、
あなたのうつなんかまだまだかわいいものよ
わたしなんか死ぬ寸前まで思いつめたこともあるのよ
などという

また別の場面で
私こんな薬を飲んでいるのと聞かされて
別の人がわたしなんかそんな弱い薬じゃ効かないわ
最近はこんな強いのを飲むの
それでもぱっとしなくてね
なんて言って、勝ち誇ったようにしている

そんなことは本来自慢になることでもないし、
相手よりもすごいと
勝った負けたみたいに言うことでもないだろう

飲み屋さんで
俺も昔はワルでねえ、
などと、ワル自慢が始まったりする

赤十字に10万円寄付したと言うなら自慢になるが
ワルを自慢げに言われても困るのだ

しかし話の流れで、ワルの自慢になり、
一番ワルだったやつが勝ったみたいな状況はないことではない

不幸自慢も聞かれる
私なんかさあ、こんな悪い男にひっかかって、と言えば、
あんたなんかまだまだだわ、私はね、と不幸自慢になる。
ちょっと誇張も入ったりして、
自己愛を満足させているのだろう。